本日の一冊は 徳間文庫より発行の
岸田るり子様作 「白椿はなぜ散った」です。
日本人の男の子「貴」。
フランス人の母と日本人の父のハーフの女の子「万里枝」。
そんな二人が出会ったのは幼稚園生の頃…。
一人っ子として育った「貴」、同世代の子どもをほとんど知らず、
のんびりとした環境で育ってきて競うという経験なく過ごしてきた。
そんな平穏な日々が、初めて壊れたのが幼稚園に通うようになってからだった。
そこでは積み木もブロックも、砂場のスコップですら自分一人のものではない。
幼稚園というものはいろんな子の集まり。
生まれて初めて自分とは違う主張をする自分以外の子どもが
いることを意識したのだ。
そんな日々を一年くらい過ごした頃だった、
赤茶色の髪の毛に、見たこともない薄いグレーの瞳に白い肌の色
他の子と違う、異国の雰囲気ただよう「万里枝」が園に転入してきた。
フランス人の母、日本人の父をもつハーフの彼女。
その容姿から「こわーい…」等と言う子どもたち…。
しかし、「貴」は初めて彼女を見た瞬間、他の園児とくっきりと浮き上がっているのに気づき、
彼女と目が合った時、他の園児に感じる違和感をいっさい持たなかった。
自分と分かち合える相手と出会えた、そう感じた。
彼女の中に、私が強く惹かれる、絶対的な何かがあると…。
ぼんやりといつも爪を噛んでいる「万里枝」に「貴」は声を掛ける。
そしていつも自由時間になると「万里枝」は「貴」の後をついていくようになる。
しかし小学生になると「万里枝」はみんなとうまくうちとけられるようになり、
「貴」よりむしろ活発になる。しかし、彼女は学校から帰ると昔と変わらず「貴」と互いの家を
行き来することを続けていた。
中学、高校、そして大学…。
二人は成長をしてゆく…
蝶は飛んでいる時が美しい。
捕獲してかごの中に入れてしまえば、その美しさはたちまち半減してしまう…
私はただ万里枝の姿を見守っているだけでいいと思っていた…
彼女には私の視界の中にいて、そこで自由に飛び回っていてほしいと。
そのうちに、いつか私の手のひらを安住の地と気づいてくれるだろう…。
少しづつ歪んでゆく貴の想い…。
一途すぎる恋心が起こした、恋愛ミステリー。
悲しくて切ない恋心…。
そして「貴」が最後に「万里枝」の本当の想いを知った時、
何度読んでも涙と感情が溢れます…。
ぜひぜひ💕